「アマミノクロウサギの死因100%は交通事故なのだから、保全計画中止を訴えます」
というようなものを見かけました。

と思ったのでこの話もまとめていきます。
アマミノクロウサギの死因100%が交通事故は誤りですし、あり得ません
検索を書けると様々なサイトでアマミノクロウサギの死因率のグラフやデータを公開していたので、今回は奄美大島におけるアマミノクロウサギ Pentalagus furnessi のロードキルという論文からデータを引用させていただくことにしました。
まず引用をみてみてください。
2007 年度から 2016 年度の 10 年間で,奄美大島 5 市町村において確認されたアマミノクロウサギの滅失個体数は 499 件であった.これらの内訳は,ロードキルとみられるもの 113 件(交通事故で緊急保護された直後に死亡した 3 個体を含む),ノネコまたはノイヌに捕殺されたとみられるもの 50 件,死因不明 336 件であった
499件中、ロードキルとみられたものが113件、ノネコやノイヌに捕殺されたとみられるものが50件、死因不明336件です。
ノネコやノイヌに捕殺されたとみられるものは咬傷からノネコやノイヌに捕殺された可能性が高いとのこと。
死因不明は↓
死因不明とは,死後数日以上が経過して腐敗・損傷の著しい個体もしくは白骨化した状態で発見されたもので,死因の特定が困難なものを指す.
時間が経ちすぎている、原形がわからないというような状態の死因の原因がわからないものを指します。
山は分解してくれる生き物も多いですから、まずどんな死因であれ原型をとどめたまま発見されるという事が少ないだろうと、少しだけでも想像してみればわかります。
例えば食べられたとき、その残りを発見できる確率はどれほど低いのでしょう。
だからこそロードキルよりも、死因不明が多いんですよね。
そもそもノネコの糞からアマミノクロウサギを食べた痕跡が見つかっています
奄美大島の森林内で採取したノネコの糞を分析した結果、糞(102個)のうちの97個(95.1%)から哺乳類の毛や骨が検出されている。中でも在来の希少哺乳類の割合が高く、主要な餌資源とされていることが判った(種別の出現頻度*2はケナガネズミ(43.1%)、アマミトゲネズミ(38.2%)、アマミノクロウサギ(15.7%)、在来種以外には、外来種クマネズミ(39.2%))。他にも、ルリカケスやリュウキュウアオヘビ、アマミマダラカマドウマ、ジネズミ類など、合計 12 種類の在来種が糞から出現した。
ノネコの糞を調べたところ、糞102個の15.7%にアマミノクロウサギのあとがあったとノネコ管理計画には記されています。
私たちも日々何かの命を食べて生きています。
生きていたら誰しも食べずにはいられないものです。
そして食べたらうんこしますよね。
食べるからうんこ出るんですよ。
みんなそうだと思うんだけど違うかな?少なくとも私はそうです。
ノネコのうんこの中からアマミノクロウサギが出たということは、ノネコはアマミノクロウサギを食べているという証拠に他なりません。
アマミノクロウサギは猫にとって狩りやすい生き物
アマミノクロウサギはノネコにとって貴重なごはんのひとつ、そしてアマミノクロウサギは猫よりもはるかに動きが鈍く、猫が狩りやすい生き物だと想像もつきやすいです。
実際、アマミノクロウサギの幼獣が捕獲されている動画も撮影されています。
(この動画は奄美の島民にとってとてもショックが大きい動画です。実際私は何度か見返していますが未だに慣れないほどですので、見る際は覚悟を持って観るようにしてください。)
飼い猫とは違いノネコは山で暮らしていますから、ご飯や安全な場所を提供してくれる人が居ません。
今日のご飯にありつけるかどうかもわからないサバイバル生活を送っている身、目の前に動きが鈍いごはんがあれば、そりゃあ狩るでしょう。
ノネコも生きるために必死ですから、食べられるものを見逃す理由がないでしょうね。
「ロードキルされたうさぎを猫が食べただけ!」という意見もありますが
ロードキルされたうさぎを猫が食べる。
ありえないことではないですよね。
実際、ロードキルされた生き物にありつく生き物もいるでしょうし、山で暮らす猫は毎日のご飯を食べられるかどうかの生活にもなるでしょうから、目の前にロードキルされた新鮮なクロウサギがあれば食べる可能性もあるでしょう。
ただ、この動画↓がある以上
ノネコがアマミノクロウサギのロードキルされたものしか食べない、というのはちょっと考えられないと思うのですが、これをみても「咬んでいるけどどこかに持って行っただけ」とか、言われちゃったりするのでしょうか。
さすがにそれはないと思いたいです。
ロードキル個体しか食べないと考えている人はアマミノクロウサギを誤解してるのでは……?
おそらくロードキルされたアマミノクロウサギの個体しか食べないと考えている人は、アマミノクロウサギを誤解しています。
彼らは本当にのんびりで、ゆったりで、私よりは素早いな!と思うことはあれど、よく想像するようなうさぎとは全く違う、「なにこれ?」と思うくらいアマミノクロウサギは動きがもったりしたうさぎなんですよ。
もうこれは動画を観るしかないでしょう。
観て、アマミノクロウサギのどんくささを知ってください。(どんくさい、そこが可愛かったりします)
明らかに人に撮影されているとわかるような状況でこの動きです。
タンカン畑で追いかけっこするアマミノクロウサギ動画↑をみて、「お、アマミノクロウサギも走れるやん!速いやん!」と思ったものですが、見て頂けたら分かりますが、これくらいの速さで「速い!」と見直すほどなんです。
書いてて段々、「どうして……」という気持ちになってきてしまいますが、元々アマミノクロウサギの捕食者があまりいなかった故の特性ですから仕方ありません。
また、これぞアマミノクロウサギという記事をオイカワマル先生も書いていましたので紹介します↓
普通の山間舗装道路を夜に車で走っていたら路上にいたのですが、こちらに気づくとあわてて斜面を駆け上ろうとして、驚くべきことに脚をすべらせて転んで、最後はこちらにおしりを向けてじっとしていました(写真)。これは高性能外来捕食者にとっては良い餌だろうと思います・・・。
引用:日記|湿地帯中毒
私はこの記事を読んだ時、思わずふいたのちに真顔になりました。
アマミノクロウサギ、どんくさいのです。
この間も山に行ったら前に居たので、車を止め待つと走って行ったのでこちらも走り出したら、ずっと道路をポテポテポテ!と頑張って右往左往走り、何がしたいんだろうと思ったほどでした。
なんだかどんくさいんだよという話をすると、アマミノクロウサギの悪口を言っているかのような、非常に気まずいような複雑な気持になっちゃうんですけど、そういうところも好きではあるので……ただ、ノネコはアマミノクロウサギ、狩れないことはないだろうことはそろそろわかってほしいですよね。
ロードキルの方が多いから管理計画はいらないみたいな意見
「ロードキルの方が多いから、山に居るノネコではなくてロードキル対策をして!」
という声もあります。
もちろんロードキル対策は大切ですよね。
最近本当にロードキルが多いので私としてもどうやったらロードキルが減るんだろうと考えているところですが、しかしロードキルが多いからと言って、山に居るノネコを放っておいていい話にはなりません。
AとBの問題があれば、どちらにも取り組むものじゃないですか?
AとBの問題が起きた時、Aの方が多いしBは放置して良いとはなるのでしょうか。
例えば★が●と▲にいじめられていたとして、●のほうが多く罵倒していたから▲は放置して良いとはならないのではないでしょうか。
ノネコとアマミノクロウサギの関係は、ノネコは生きるために食べているので、いじめるいじめられるの関係では決してありませんが、しかし「生きているためだからアマミノクロウサギを食べているのを見逃そう」とはできない問題なので、やはり対策されるべきです。
人員や予算の関係で後回しされる問題もあるでしょうが、今取り組める問題なら取り組むべきですよね。
安心してください、ロードキル対策にも取り組んでいます。
中々成果が上がっているとは言えませんが、試験的に三太郎峠を予約制にしてみたり、夜間の山はこれくらいの速度でと広報したり、対策が取られています。
参考三太郎線で夜間車両規制へ|南海日日新聞
参考三太郎線で夜間規制開始 奄美市住用|南海日日新聞
これからも対策を取るでしょう。
そもそもノネコ管理計画は保全計画、万が一アマクロの直接の死因じゃなくてもやらない理由にはならないよね?
誤解されやすいのですが、アマミノクロウサギを食べているからノネコを山から出そうとしているわけじゃないんですよ。
ノネコが生態系に影響する可能性があるからノネコ管理計画があるんです。
更に管理計画は保全活動の一部ですから、ノネコだけが対策をとられているわけでもないんです。
なので、もし本当にノネコがアマミノクロウサギの死因でなくてもノネコ管理計画はあるでしょう。
というのも、ノネコはアマミノクロウサギだけでなく、ケナガネズミ(天然記念物)を捕らえ持っていく様子も撮影されてもいるのですよね。
猫がケナガネズミに襲いかかり、口にくわえて立ち去るまでが映っていた。
ケナガネズミが奄美の生態系の一部であることは明白ですから、ノネコがケナガネズミを捕食することで生態系が崩れる可能性はありよりのありですよね。
アマミヤマシギ(種の保存法で捕獲・採取が禁止されている)が生きている時に捕獲されている様子もyoutubeにありました↓
アマミヤマシギもクロウサギに負けず劣らずまったり属性です。
全体的にもったりとした動きをする生き物が多い奄美ですから、正直ノネコにとって奄美の山は、大人になって捕食者と戦えるようになれば食べるのにそこまで困りづらい山なのではないでしょうか。
(※食べるのに困りづらくても天候が雨や風ばかり、多湿なので食べることが出来ても奄美の山は猫にとって過酷であることは間違いないでしょう)
管理計画に記されたノネコの糞分析も再度見ましょう↓
奄美大島の森林内で採取したノネコの糞を分析した結果、糞(102個)のうちの97個(95.1%)から哺乳類の毛や骨が検出されている。中でも在来の希少哺乳類の割合が高く、主要な餌資源とされていることが判った(種別の出現頻度*2はケナガネズミ(43.1%)、アマミトゲネズミ(38.2%)、アマミノクロウサギ(15.7%)、在来種以外には、外来種クマネズミ(39.2%))。他にも、ルリカケスやリュウキュウアオヘビ、アマミマダラカマドウマ、ジネズミ類など、合計 12 種類の在来種が糞から出現した。
これらすべて、死んだ個体を食べたと思いますか?
というか死骸も本来ならば山のものが食べたり分解するので、死んでたら食べてOK、生態系に影響がないとは残念ながらならないんですよね。
生態系は命がぐるぐる複雑に絡み合っているもの、山の生き物のうんこやおしっこだって大切な生態系を作る要素です。
「ちょっとくらい、猫に与えてあげてもいいじゃん!ずるい!」
と思うかもしれませんけど、本来猫は人が管理したい生き物ですので、山の生き物を自分で捕らせるサバイバルを強いるのではなく、この機会に山から出して人の元に届けられるよう呼びかけましょうよ。
↓ノネコ譲渡希望者募集ページはこちらだよ!↓
まとめ
私が言いたいのは、「ノネコはアマミノクロウサギを食べている、許せん!」ではありません。
ノネコだって生きるために必死だから、アマミノクロウサギを食べてしまうだろうことはわかっているんです。
ただそれを許すと、後々大変なことになってしまうかもしれないし、現に猫が原因で絶滅した生き物もいる、そんな世界なので対策を取るのは当然じゃないでしょうか。
まあ、そもそも猫は家畜ですからね。
対策を取るというより、元々の猫のいるべき場所、ぬくぬく暮らせてごはんにも困らない、サバイバルしなくていい生活の方が猫にとっても良いんじゃ、とも思うのですよね。
アマミノクロウサギおよび山の生き物は山で暮らすし、猫は家でぬくぬくする。
やっぱそれが良くないですか?
イメージとしてはこんなかんじで↓
ねこはおうちに、みんなは森に。
それを実現させるためにも、アマミノクロウサギの死因は100%ロードキル!とかじゃなくて、ノネコ譲渡者募集、呼びかけていただけると幸いです。
↓ノネコ譲渡希望者募集ページはこちらだよ!↓