しーまブログの「シロによるノネコ管理計画の解説コーナー」でも書いたんですけど、まとまらない記事になってしまったのでこちらでも記事にしてみます。
ノネコ管理計画が守る奄美の生態系、なんで守る必要があるのかを書きます。
結論から言うと、守る理由は様々ありますが、島民視点で言えば「生きていく土壌を失わないため」です。
よくアマミノクロウサギが増えたから猫を捕まえなくて良いだとか、猫の命は軽いのかとかそういう話がツイッターやフェイスブックでも耐えませんけど、何も奄美の固有種が珍しくて守りたいそれだけでこの計画があるわけないじゃないですか。
守りたいのは生物多様性、生態系サービスです。
ノネコ管理計画は、人類のための計画、今回はそういう話をしていきまーす!
奄美大島の生態系を守るノネコ管理計画
ノネコ管理計画は何を守る計画なのか?!
って話が、今でも色んなところで色んな憶測の元囁かれていますよね?!
でも皆さん、ちょっと落ち着いてノネコ管理計画の資料、1ページを見てみましょうか↓
読めますね?
そう!!!表紙には既に答えが書いてあるんです!
ノネコ管理計画は生態系保全のため!
よくアマミノクロウサギは増えている!という話を聞きますが、アマミノクロウサギをはじめとする生態系を保全するための計画なので、まるごと守られないと意味がないんですよ。
「アマミノクロウサギを保護したらいいじゃん!」
「ノネコはそのままにして希少種だけ保護しなよ!」
なんて声も聞くんですけど、それじゃ意味ないんですよね。
生態系守れないと意味ないので、もしその生態系事保護するのだとしても、奄美をそのまま保護の流れになるでしょうから猫は山から出す一択、むしろ島ごとになれば島に猫はいられなくなるので今より厳しい状況になるのではないでしょうか。
ノネコ管理計画では、捕獲されたノネコはできるだけ飼養を希望する者へ譲渡するとありますから、もし猫を救いたい気持ちがあって、何かしたいと考えている方は譲渡も検討してみてください!よろしくおねがいします!
奄美の生態系を守るメリット!生態系損失は人類の損失になる、は本当の話ですよ~
奄美の生態系を守るのは人のため他なりません!
なにも奄美の生き物が珍しくて可愛いから、珍しいから守りたくてやっているものじゃないんですよ。
確かに珍しいからって部分で奄美は率先して保全に取り掛かってもらっている状態にはありますが、そもそも生態系を保全はどの場所でも取り組まないといけない問題なので、奄美だけ特別ってわけじゃないんですよ……。
でね、生態系を守るメリット。
この記事は特に奄美の生態系を守るメリットをざっくばらんに紹介します。
(詳しく話せないよ!だって詳しく話すと本1冊とか2冊でも終わらない話なんだよ?!)
島民にとっての話だったり島外の人にとっての話もあるので、分けて紹介しますね。
島民にとって奄美の生態系は生きていくための土台
生態系を守るのは、そこに生きる生き物を守るためではなくてそこに生きる生き物によって得られる生態系サービスを守りたいから守るのです。
生態系を守ることによって結果的には生物が生きる場所を守れるので人間のためだけとは言い難いんじゃないか?という話もありますが、大前提は人のためです。
では奄美の生態系を守ることがどう島民に関係があるのか、この項ではその話をします!
アマミノクロウサギがもし滅んだら?の話で考えてみよう
そもそも生態系は私たち人間がいくら考えても理解しきれないほど複雑でかつ繊細な命の巡りなのですが、歯車のように1つ欠けるとそこからガタガタッと破綻するリスクを秘めています。
例えばアマミノクロウサギで考えてみましょう。
もし、アマミノクロウサギが滅んだらどうなるでしょうか?
アマミノクロウサギが滅んでしまうことで困るのがこの生き物たちです↓
- ヤマナメクジ
- オオシマケマイマイ
- アマミセマダラマグソコガネ
- オオシマセンチコガネ
特にアマミセマダラマグソコガネはアマミノクロウサギのフンだけを食べて生きている糞虫なので、アマミノクロウサギの絶滅はアマミセマダラマグソコガネの絶滅に直結します。
他の生きものだって、アマミノクロウサギのうんこをあてに生きているところもあったでしょうから、エサが減ることで減ってしまいます。
するとどうなるか……。
糞虫は緑を植える者!山が痩せる可能性が出てくる
アマミセマダラマグソコガネなどの糞虫は、糞の中にある種を土に植える役割があるとも言われている虫です。
ですから糞虫が減る=山が痩せる可能性もでてくるんですよね。
とはいえ、糞虫だけに種を任せているわけではないでしょうからそれだけで山が枯れる!というわけにはならないとは思います。
しかし糞虫便りの草木は減ってしまうでしょうし、少なからず山の耐久度にも影響がありそうです。
糞虫便りの草木が減るということは、その草木を頼りにしていた生き物にも影響するわけですから、その生き物を食べていた捕食者にも影響が出て、やはり結果的に山の耐久度に影響が出るリスクが頭に浮かんでしまいますね……。
山が痩せると生きづらくなる
山ってそこに棲む生き物のためだけにあるわけじゃないんですよね。
例えば山には快適環境形成機能といって、私たちの環境を整えてくれる機能があるんです。
森林の蒸発散作用で夏の気温が下がったり、逆に冬は上がったり、防音や防風にも役立つため、台風の時は山がないと辛いでしょう。
・山は文化的サービスもくれる!
それに島民なら学生の頃、山へ遠足にも出かけましたよね。
文化的にも山にはお世話になっているわけです。
山がないと生きづらいし、楽しさも半減してしまうんですよ。
いつもそこにあるからって、適当に扱ったままでいたらずっとある保障はないんです。
・山の耐久度が落ちると土砂災害だって増えますよ
しかも奄美は雨が多い!!
山の耐久度が減れば、当たり前のように雨のたびに土砂災害が今以上に頻繁に起こるようになるでしょう。
生態系をないがしろにするのは、自分や自分の大切な人の生活を不便なものにしてしまいますから、ちょっとここは考えてみてくださいね。
山が痩せると海にも影響が出てくる!海は奄美のアイデンティティのひとつでもありますよね
山は私たちの生活しやすい環境づくりだけではなく、海の環境づくりにも欠かせない存在です。
海が汚い奄美ってどう思いますか?
島民ながらに、嫌じゃないですか?
山が痩せるとそれもあり得ない話じゃなくなってしまうんです。
簡単に山と海の関係を紹介してみます↓
- 雨が山に落ちる
- 山が雨をたくわえる
- 段々とたくわえられた水分が川へ流れていく(ここでもろ過されている)
- 川が海へ到着するまでに綺麗にろ過されていく
- 山と川を辿った栄養のある水が海のプランクトンの栄養になる
- プランクトンは海の生き物のご飯になる
海の生き物にとってプランクトンは必須!
ですから山が痩せるということは海の生き物の存続にも関わってきちゃうんですよね。
海の美しさは海の生き物が作っていますから、海の生き物に必要なプランクトンがいなくなれば奄美の美しい海も死んでしまいます。
島人でも生き物や生態系に興味がない人は多数いると思いますが、さすがに海が死んで良いって人は少数なのではないでしょうか。
生態系を壊すと海が死ぬというのはあり得る話なのでこちらも心にとどめておいていただけると幸いに思います。
島外の人にとっても奄美の生態系は宝!というか希望にもなりえるかも
ここまでの話だけだと、
「なんだ、島の生態系は島の人にしか関係ない話じゃないか!」
と思う人も出てくると思いますが、実は島の生態系は島に来たことがない人や、島の裏側に住んでいる人にさえ関係のある話なんですよ。
それは何故なのか、ここでは島外の人の島の生態系を守る理由を1つお話しします。
薬の半分以上は生物由来!生物多様性が人を病から救ってくれるかもしれない
私たちが普段何気なくお世話になっている薬。
実は半分以上が生物由来なんですよね。
薬を作る様子を思い浮かべる時、ラボで白衣を着た研究者が試験管を揺らしたり混ぜたりしながら記録をとるってのを思い浮かべませんか?
しかし実は何かを発見したい時、研究者は熱帯の森やサンゴ礁に赴くんだそうです。(生物多様性/本川達雄著に書いてありました)
何故なら植物などに含まれる毒は使い方次第では薬にもなるからなんですよ。
・奄美大島は頻繁に新種が出る生物多様性のホットスポット島なので守る価値は十分にあります!
奄美大島は頻繁に新種が出る島&まだまだ謎深き島なので、つまり未来の薬の原料が埋まっているかもしれない島なんです!
そのため遠くの人が奄美の生態系を守りたいというのはとても理にかなっているんですよ!
奄美の生態系を守ってたらいつの日か素晴らしい薬ができるかもしれませんし、それが人の役に立つ日がくるかもしれませんからね。
ノネコ管理計画は奄美大島だけの話じゃないんだよとツイッターでたまに発言しているのですが、こういうところからも言えるので、ぜひぜひ意識してみてもらいたいです!
(上でも話しましたが、奄美大島だけが守るべき生態系を持っているというわけではないです。ここでは守る価値がありますよと表現していますが、確かに生物多様性を見れば奄美は抜きんでてすごい島ではありますが、全ての土地の生態系は素晴らしいのです!素晴らしいんですよ!)
・どんな植物が薬になるの?
例えば有名どころだとセンブリですね。
センブリはとても苦い植物なのですが、胃弱や食欲不振、消化不良、食べ過ぎ等に効果を発揮します。
他にもジギトキシンという強心剤として用いられるお薬はジギタリスという毒草とされていた草を原料としていますし、サリチル酸という水虫の際に処方される皮膚軟化剤にも用いられる成分はセイヨウシロヤナギやセイヨウナツユキソウを原料としています。
・生き物から薬を作るしか方法はないの?
ゼロから化学合成するという方法もありますが、今現在ある成分ではなく、まだ発見されていない成分をゼロから作るのは途方もない話です。
それなら熱帯の森やサンゴ礁などのある地に赴いて、新たな植物や成分を発見し、研究した方がまだゴールが見えるというものです。
・人間界はまだまだ病気であふれている!薬の元を守るために生態系を保全するのはとても大切なこと
人間の世界にはまだまだ治らないとされる病気や、新しいウイルスなどもどんどん出現していますよね。
それらを解明したり、治すお薬のカギが生物多様性なのです。
ですから生物多様性を守る土台である生態系を守ることは、私たち人類にとって財産を守ることと同じと言えます。
「自分は元気だからそんなの関係ない」
と思っても、あなたの大切な人とか、あなたがこれから出会う大切だと感じる人が、生物多様性のたまものである薬を必要とする日がくるかもしれません。
人生は何があるかわからないものです。
他人事だと思わずに生態系は自分の未来を左右するものだという意識を持ちたいですね。
奄美だけじゃなくてどこの生態系も宝だよ!自分にできることをしながら守っていけたらいいよね〆
私なりにどうして保全するのか、という話をしました。
ただこの記事にあることだけが保全する理由ではないです。
私はまだまだ勉強中の身で表現方法も足りないのでこれくらいしか説明できないのです。
だからまた、別の記事とかでこういうお話できたらなとも思います!
少しでも多くの人が、奄美大島だけではなくて自分の土地の生態系などに興味を持ってくれたらいいなあとも感じている今日この頃ですよ。
ではまた♪