「最近よくSFTSって見かけるけどなんだろ?」
と思ったので調べたところ、難しそうなサイトばかり……覚えられそうにないので自分のためにまとめることにしました。
端的に言うと、マダニ媒介感染症SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは、致死率20%(厚生労働省のF&Q)とも言われいる、まだ抗ウイルス薬などの治療法が確立されていない病気です。
※抗ウイルス薬はないですが、対症療法での治療をします。また、薬は今研究中とのことでした。
身近な存在である猫や犬から媒介されることもある怖い病気なので、知っておいて損はないですよ。
一緒に勉強しましょう!
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
SFTSとはなんなのか、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)|NID国立感染症研究所」コチラのSFTSについての解説を表にまとめてみました。
SFTSの歴史 | 2011年に中国で発見されたダニ媒体性感染症 2013年1月に国内で海外渡航歴がない方がSFTSに罹患(罹患=病気にかかること) それ以降もSFTS患者が確認される |
症状(人) | 感染後、6日から2週間潜伏期がある 発熱、食欲低下や嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、筋肉痛、意識障害、失語、リンパ節が腫れる、皮下出血、下血などの症状が現れ、重症化すると死に至ることもある |
致死率 | 6.3~30% |
かかりやすい人の特徴 | 男女比はほぼ1:1であるため性別によるかかりやすさはない 日本で確認されたSFTS患者の年齢層は5歳~90歳、亡くなった方は50歳以上であるため高齢者は重症化しやすいと考えられている |
感染経路 | マダニ中心だが人から人、猫から人、犬から人への感染報告もあり |
治療方法 | 対症的な方法のみで有効な薬やワクチンはない |
参考:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)|NIID国立感染症研究所
SFTSはまだ発見されて浅い病気なんですね。
だからこそ、治療方法が対照的な方法のみ、有効な薬やワクチンがないためあなどれない病気です。
感染経路はマダニ中心ですが、SFTSに既にかかってしまった犬や猫に咬まれて感染、唾液から感染することもあるので、決して「草むらに入らなきゃOK!」とは思わないようにしてください。
もちろん、草むらに入ったらマダニに咬まれる可能性はぐんと上がりますから、草むらに入る時は噛まれないよう対策をしましょう。
人の致死率累計20%!だが年々低くはなっている
NIID国立感染症研究所のページには致死率6.3~30%とありますが、厚生労働省のQ&Aをみてみると、日本の致命率は約20%であるとの記載があります。
問18 SFTSの致命率はどのくらいですか?
答 中国では、致命率は6-30%とされています。なお、日本での感染症発生動向調査(2019年4月24日現在)では、届出時点の情報で404名の報告のうち65名が死亡しています。日本でのSFTSの致命率は約20%です。
(参考:致命率(case fatality rate)とは、ある特定の病気にかかったと診断され、報告された患者のうち、一定の期間内に死亡した患者の割合を示したものです。)
どちらにせよ高いので注意が必要なのですが、死亡率の推移を見てみると年々減っているので、致死率自体は年々下がっています↓
ただ、総計も増えているので致死率が段々下がってきているからと言って治る病気だと油断しないようにしましょう。
現に、SFTSの分布は広がってきています。
問13 国内で患者が報告された地域以外でも注意が必要ですか?
答 これまでのところ、SFTSの患者は、西日本を中心に発生していますが、徐々に患者発生が確認された地域が広がっています。これまでに患者が報告された地域以外でもSFTSウイルスを保有するマダニや感染した動物が見つかっています。SFTS患者の発生が確認されていない地域でも注意が必要です。
更に、実は全国的にウイルス遺伝子陽性マダニが検出されているという報告もありました。
九州から北海道の26自治体で2013~2015年にかけて国内のマダニの重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)遺伝子保有状況をリアルタイムRT-PCRで調査した結果、複数のマダニ種(タカサゴキララマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、オオトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ等)から、SFTSV遺伝子が検出され、患者が発生している自治体に限らず全国的にウイルス遺伝子陽性マダニが分布していた(図1)。
SFTSは野生動物が多い地域でかかりやすいとも言われていますが、全国にウイルスを保有しているマダニが居る以上、外飼いの猫や野良猫、野良犬が多い地域では野生生物が少ないのだとしても「絶対にかからない」ということはないのでその点も注意してください。
SFTSが発症した時の症状・対処法・予防
SFTSが発症した時の人や猫、犬の症状をまとめました。
人の場合
症状
- 6~2週間ほどの潜伏期
- 原因不明の発熱
- 消化器症状(食欲が低下する、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など)
- 時々、頭痛や筋肉痛、神経症状(意識障害やけいれん、昏睡)、リンパ節腫脹や呼吸器症状(咳)、出血症状(紫
- 斑、下血)などの症状が出る
- 重症化し死亡する例もある
もしSFTSの症状が出たら・・・
- ダニに咬まれる・草むらに入ったら2週間は経過をみて、発熱があれば医療機関を受診
- 受診の際は、いつ草むらに入ったかなども伝える
- マダニが吸着している場合→皮膚科
- 発熱や下痢などの症状の場合→内科
SFTSにならないための予防方法
SFTSにかからないためには、マダニをできるだけ避け、SFTSにかかっている可能性のある動物との濃い接触を避けるようにします。
野外での恰好・対策
- 長袖長ズボン、首にタオル、軍手や手袋を着用し、長靴または靴下でズボンのすそを覆う
- ナイロン製のものだとツルツルしてマダニがつきづらい◎
- シャツの袖口は軍手または手袋の中にIN
- 忌避剤(DEET配合のものなど)を服の上から塗布(皮膚に塗ると汗で流れるため衣類の上から塗布)
野外での作業後
- 上着、作業着を家に持ち込まない
- 作業後すぐにシャワーまたは入浴し、ダニがついていないか確認、吸着前であれば洗い流す(マダニは人についた後に吸着場所を探すので猶予がある)
- ダニが服についていたらガムテープで取り除き、ガムテープに封じ込めたまま捨てる
飼い犬にできること
- ダニ忌避剤を獣医師に処方してもらう
- 散歩で草むらに入ってしまった場合は、外でブラッシングしてダニを落とす
- 室内飼い
飼い猫にできること
- 室内飼い
猫・犬の場合
症状
- 発熱・元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢・黄疸
- 猫は重症化しやすく死亡率がかなり高い
- 無症状の場合もある
もしSFTSの症状が出たら・・・
- 動物病院へ・・・
- しかし、これといった治療法が確立されていないのもあり、SFTSにかからない工夫をしてあげることがとても大切
SFTSにならないための予防方法
SFTSは外に行きマダニに咬まれるからこそ発症してしまう病気です。
ですから、大切な猫や犬をしっかり管理してあげることこそ、最大の予防方法と言えます。
基本的に室内で飼育する場合は感染する可能性は低く、過剰な触れ合い(口移しで餌を与えるなど)を避けることが推奨されています。また、外出する場合はダニの駆除剤(フィプロニル製剤など)を使用するなどの対策が必要です。
室内で飼育すれば、散歩などで草むらに入りマダニがついてきても、散歩後のブラッシングでマダニを落としてあげることが可能です。
逆にどこに行くか管理しづらい猫を外飼いしてしまうと、家にマダニを持ち込んだり、外でマダニに咬まれSFTSが発症してしまうこともありますから、猫や家族のためにも室内飼いがオススメです。
実際のSFTS例
実際のSFTS発症例を引用まとめしていきます。
全てを引用するわけではなく、どのような状態でどうなったかなどのみの引用ですが、リンクも貼りますので気になった方はリンク先で読んでみてください。
マダニから感染、早期診断で良好な経過をたどった例
2013年5月1日に自宅近くで農作業をしていたことが確認されている。同年5月5日左側腹部を刺咬中のマダニに気づき、家人によりほぼ完全な状態で摘除されている。5月6日に感冒様症状を自覚し、翌5月7日(マダニ刺咬後7日目)に発熱と嘔吐、下痢などの症状が出現したため当院初診となった(第1病日)。来院時現症では体温38.0℃、発熱に伴う顔面の紅潮はみられるものの明らかな紅斑や皮疹はみられず、嘔気、下痢症状と臍周囲に軽度の圧痛がみられた。
感染者 | 徳島県在住の73歳男性(海外渡航歴と3カ月以内の県外移動歴なし) |
感染経路 | 2013年5月1日に農作業中、マダニに咬まれた |
症状 | マダニから噛まれて7日目に発熱、嘔吐、下痢など。来院した時には38.0度の熱 |
結果 | 5月21日に軽快退院 |
餌付けしていた猫に咬まれ発症
患者は生来健康な50歳代の女性で, 発熱, 食欲低下, 嘔吐等の症状を呈し, 末梢血液検査で白血球減少と血小板減少が認められ, 症状が悪化し死亡した。病理解剖の所見から, SFTSが疑われ, 詳細な検査の結果SFTSが原因であったことが明らかになった。餌付けしていたネコに噛まれ, その2日後に発症していること, また, そのネコもSFTSV感染症を疑わせる症状, 検査結果が認められたことから, ネコから感染したSFTS患者と考えられた。
感染者 | 健康な50歳代の女性 |
感染経路 | 餌付けしていた猫に咬まれた |
症状 | 咬まれてから2日後に発熱、食欲低下、嘔吐など |
結果 | 死亡 |
家族5名でSFTS
患者から増幅されたSFTSV遺伝子の塩基配列が母親から増幅されたそれと一致し、由来を同じくするSFTSVによる感染と考えられた。SFTSVは体液を介してヒト-ヒト感染することが報告されている2)。本患者も母親の介助、汚物の処理や衣類の交換を行っていたが、本患者においても大腿部にダニ刺咬痕が認められていた。そのため、ヒト-ヒト感染による発症であるのか、ダニ刺咬による発症であるかは断定できていない。
引用:家族内発症2名の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)患者を含むSFTS患者5名の臨床的特徴|NIID国立感染症研究所
感染者 | 愛媛県中南西部在住者、発症前の海外渡航歴や県外移動歴はなし、50代男性1名、70代女性2名と男性1名、90代女性1名、うち2名は同居している親子 |
感染経路 | 5名中4名にダニ刺咬痕が認められた。ただし母親の介助をおこなっていた娘については、ダニ刺咬痕もあったが汚物処理・衣類交換を行っていたためヒト-ヒト感染の可能性もある |
症状 | 38℃以上の発熱、消化器症状(下痢、嘔気)、血小板減少、白血球減少、肝機能障害、血清フェリチンの上昇、DダイマーとFDP上昇 |
結果 | 90代女性は死亡、他4名は回復 |
獣医師と動物看護士が猫から感染
2018年8月16日に体調が悪いネコを診察・治療しました。当該ネコは前日に別の獣医師が診察したところ、SFTSを疑い、診断のため宮崎大学に遺伝子検査を依頼しており、8月18日にSFTSと診断されました。獣医師はネコとの接触から10日後に発熱と倦怠感を訴え、県内の医療機関を受診しました。臨床所見からSFTSが疑われたため、県内の高次医療機関に転院し、SFTS検査を受けるも、当初の診断結果は陰性でした。疫学的所見および臨床所見から依然とSFTSが強く疑われたことから、SFTSを念頭に置いた治療が実施されました。
(中略)
小動物病院で来院したイヌやネコの通常の治療過程で、グローブとマスクを着用していたにも係らず、容易にSFTSウイルスに感染することを示しております。
感染者 | 獣医師と動物看護師 |
感染経路 | 体調が悪い猫を診察、治療した際に感染(皮下点滴の際に出血、そのさいに血液のふき取り・止血処置) |
症状 | 獣医師:10日後に発熱と倦怠感 看護師:12日後の8月28日に症状を訴え、県内医療機関を受診 |
結果 | どちらも回復 |
犬から人へ感染した例
・イヌがSFTSを発症したのが6月初旬で、当該患者はそのイヌを直接触れながら介護をした後にSFTSを発症した。
・当該患者はマダニに咬まれた痕跡は確認されなかった。
・発症後約2ヶ月後に採取された血液において、数ヶ月以内にSFTSウイルスに感染したことを示す抗体が検出された。
感染者 | 徳島県40代男性 |
感染経路 | SFTSの犬に直接触れながら介護して感染 |
症状 | 6月初旬に飼い犬が体調不良でSFTSと診断され、6月中旬に飼い主が体調不良となり医療機関を受診するも検査は未実施、そのまま8月になり動物病院と話し合いし国立感染症研究所にてSFTSと診断 |
結果 | 犬も飼い主も回復 |
気づいたら随時追加予定です。
まとめ〆
SFTSは致死率が高いわりに、あまり知られていない病気です。
マダニに咬まれなければ問題ないのですが、知らずにつけてきてしまう場合もあるので、草むらに入った時はしっかり体をチェックし、よく手を洗うなどしてください。
また、外で猫を飼っている方、散歩中犬がよく草むらに入るという場合も気を付けてくださいね。