「奄美で猫3,000匹殺処分!ひどすぎ!」
「クロウサギ増えてんだから別に猫そのままでもいいでしょ!」
このように、ツイッターでは今日も今日とて奄美のノネコ管理計画についてのバッシングが続いていますが、実際のところどうなのか知りたくはないですか?
実は奄美のノネコ3,000匹殺処分、厳密にいえば本当ではありません。
しかし、このままみんながノネコ管理計画を誤解したままでいると、ノネコ3,000匹殺処分は本当になってしまうかもしれません。
この記事では、奄美のノネコ管理計画についてよくある誤解をわかりやすく解説しています。
この記事を読めばあらかた、ノネコ管理計画について理解できますよ!
そしてもしこの記事を読んで少しでも納得できる人がいたら、ノネコ殺処分反対!ではなくノネコ譲渡をツイッターなどで呼びかけてくれると嬉しいです!よろしくお願いします!
>>ノネコの譲渡についてはコチラの「奄美大島における生態系保全のため捕獲したノネコ譲渡希望者の募集について」をご覧ください
ノネコ管理計画反対派の意見、よくある誤解一覧
よくある誤解を一覧するために、ノネコ管理計画反対派の某さんのブログを参考にさせていただきました!ありがとうございます!(※許可をもらっています)
それでは、ノネコ管理計画反対派の意見を見てみましょう。
- 3,000匹の猫の命と引き換えに世界遺産に登録
- 殺処分が認められた国となってしまっていいのか
- アマミノクロウサギの数改ざんは世界遺産に登録したいがため
- 猫はお腹がいっぱいならクロウサギを食べないはず
- 猫に簡単に捕まるほどウサギは弱くない
- ノネコとノイヌも希少種だから殺すな
- ウサギも大切だから生態系を崩さない対策を取れば良いだけ
- 猫を処分したらクロウサギが増えて生態系が崩れる
- アマミノクロウサギの死因の原因は100%交通事故
- 奄美を猫の島にして観光客を増やせばいい
- 農作物の被害が拡大したらクロウサギが害獣になる
これら意見は、動物を愛する人たちからしてみたらまっとうな意見です。
では、奄美のノネコ管理計画はこの意見そのままのものなのか?次の項からひとつずつ検証していきます。
使う資料
3,000匹の猫の命と引き換えに世界遺産に登録
実は奄美大島ではまだ、ノネコの殺処分は一度も行われていません。
奄美では3,000匹の猫が殺処分されるのだと、今まさに殺されそうになっているのだと確信している人も少なくないと思います。
しかしノネコ管理計画が実行されているにも関わらず、いまだにノネコ管理計画で殺処分された猫は0なのです。
この議題で考えたいのは以下の2点です。
- 3,000匹の猫が殺されるのか
- 世界遺産のために殺すのか
分けて検証します。
3,000匹の猫が殺されるのか
奄美にはノネコが3,000匹いない
結論から言うと、もしノネコが全て殺処分になったとしても、3,000匹の猫が殺されるというのは現実的な数字ではありません。
3,000匹の猫を殺処分するためには、3,000匹の猫が居なければならないので、現実的ではないのです。
今現在、奄美にいるであろうとされているノネコの数は、推測651頭~1,277頭とされています。
参考奄美大島における外来種としてのイエネコが希少在来哺乳類に及ぼす影響と希少種保全を目的とした対策についての研究( Dissertation_全文 )のp35-42
ノネコを数える際、以下のことを行っています。
- 自動撮影カメラ設置しノネコの確認
- ノネコの生息面積を割り出し
- ノネコ密度を割り出し
- +奄美大島と似た環境の沖縄県やんばる地域、2001年から2005年のノネコ捕獲数と照らし合わせ
推測ノネコの数に、飼われている猫や野良猫は含まれていません。
奄美大島と似た環境である沖縄県やんばる地域のノネコ数と照らし合わせると、もうちょっと多いのではないかという考察もされていました。
もっと精密な細かな数値は、ノネコを一斉捕獲してみないとわかりません。
しかし奄美大島はノネコを一斉捕獲ができないくらい割とでかい島なので、完璧な数値を求めるのは難しいですね。
来たらわかりますが、奄美ってでかいんですよ。笑
推測651頭~1,277頭のノネコ数なので、3,000匹のノネコを殺処分はできないことがわかります。
3,000匹のノネコの3,000匹はどこを出所にしているのかわかりませんが、おそらく年300匹単位で捕獲することを想定し、10年で3,000匹だ!ということなんですか?
それにしたって、年300匹捕獲していったらだんだん、ノネコの数は減るんで3,000匹のノネコ殺処分とはなりません。
(この数をどう計算したかここに載ってたよ!など知っている人がいましたら教えてください!よろしくお願いします!)
ノネコ捕獲後の流れ、推測651頭~1,277頭のノネコも捕獲後すぐに殺処分になるわけじゃないし、譲渡希望者さえいたら殺されない
「推測651頭~1,277頭のノネコは殺されるのか?」
3,000匹のノネコがいないにしても、推測651頭~1,277頭のノネコは殺されるのか、疑問がわいた人もいるでしょうから、こちらは「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画(2018 年度~2027 年度)」「ノネコ譲渡に関するQ&A~譲渡に関して」を見てみましょう。
ノネコ管理計画p4~p5とノネコ譲渡に関するQ&Aによると、ノネコを捕獲した際には、以下のことが行われます。
- ノネコを捕獲
- 鑑札やマイクロチップで飼い主が確認出来たら飼い主へ引き渡し
- 首輪装着の場合は地元役場で1週間公示し飼い主確認(確認できない場合は所有者が判明しない猫として県が引き取る)
- その他の猫は猫を飼いたい人へ譲渡
- 猶予期間である1週間で譲渡できない場合はできる限り苦痛を与えない方法で安楽死
見てわかる通り、捕獲されたノネコは1週間の保管期間があります。
この1週間が短すぎるとの見解もありますが、保健所の犬や猫の保管期間は大体が3日~7日ほど。
3日~4日の収容日数の施設が多いですが、奄美大島では一週間(7日)と定めているため、まずまず良心的といえます。
また、ノネコの前に駆除対象となっているマングースは譲渡情報がないことから、マングースの場合、捕獲後は殺処分されていることがうかがえます。
そう考えるとノネコへの待遇はとてもいい方ですし、譲渡希望者さえいれば良いだけの話なんです。
追記そもそもフイリマングースは特定外来種に指定されており、譲渡や飼育は禁止とのこと!教えてくださりありがとうございます!!
譲渡のためのインターネット写真公開ができない理由は「問い合わせによる業務支障」
「譲渡希望者を募るためにインターネット写真公開をするべき!」
という意見も観ましたが、こちらの答えは「ノネコ譲渡に関するQ&A~譲渡に関して」9番にあります。
写真などを公開すれば、譲渡希望者は増えるかと思いますが、情報公開をしてもらえないでしょうか。
という問い合わせ内容があり、その答えが↓になります。
現在SNS等で様々な情報が広まっております。
その中には間違った情報も多く、間違った情報に基づくお問い合わせも多い状態で、業務に支障をきたしております。詳しい情報公開を行うと今以上に計画の遂行や業務に支障が出ることが懸念されますので、現在のところ公開する予定はありません。譲渡者には週に1度収容されたノネコの写真を送付しています。
週刊文春に掲載されたり、どうぶつ基金さんやそのほかのブログなどで奄美大島のノネコについての記事が多く挙がったことも影響してでしょう。
問い合わせが多く業務が大変になっていることが伺えます。
しかし逆に考えると
詳しい情報公開を行うと今以上に計画の遂行や業務に支障が出ることが懸念されますので、現在のところ公開する予定はありません。
とありますので、業務に支障がでなくなれば(無意味な問い合わせが減れば)、情報公開の可能性、上がりそうですよね。
インターネットで情報公開がされるだけでも譲渡希望者は増えるでしょうから、1日でも早く、職員が問い合わせによる業務支障から解放されることを願います。
世界遺産のために殺すのか
奄美大島は確かに世界遺産を目指していますが、世界遺産がなくても奄美のノネコ対策は必要なので、「世界遺産のために殺す」というよりは、「世界遺産を機に生物多様性の保全をすすめている」という表現が適切です。
また、ノネコは殺処分ありきではなく譲渡先も探している状況です。
>>ノネコの譲渡についてはコチラの「奄美大島における生態系保全のため捕獲したノネコ譲渡希望者の募集について」をご覧ください
追記世界遺産を目指しているのは、奄美大島だけではなくて琉球列島の島々だよ!とありましたので追記致します!
世界遺産を目指しているのは奄美大島だけじゃなく、徳之島、沖縄島北部、西表島もそうです。つまりこの保全計画は奄美大島だけのものではないということです。
そして保全自体、つい最近始まったものではなく、少なくとも2005年に奄美大島マングース防除事業が開始されているため、10年以上前から奄美大島は生物多様性の保全に取り組んでいることもわかります。
奄美大島のノネコ管理計画を”安易な殺処分”と声を上げる人も少なくないですが、少なくとも安易な殺処分計画ではない(そもそも殺処分ありきのものではない)ことを認識していただけたら幸いです。
生物多様性とは生き物同士の繋がり
生物多様性とは、この世界に色々な生き物がいて、そのつながりを指す言葉です。
わかりやすい例えを出すなら、ジョージアのCMで「この世界は誰かの仕事でできている」というものがありましたよね。
まさにあれの自然界バージョンが、生物多様性です。
自然界でも、ひとつひとつの生物に役割があり支え合っているからこそ、今もなお、この世界が続いています。
どれもが欠けてはならない、世界のひとつなのです。
生物多様性の保全をしないと世界が終わる
生物多様性を保存するのは、この世界を終わらせないためです。
生物多様性で保ってきた世界ですが、人間の影響でずいぶん壊されているのが現状です。
例えば機械の歯車をひとつ取ってしまうと動かなくなるかエラー連発になりますよね。
生物多様性はひとつひとつの生き物が歯車のように支え合っている状態なので、人間の影響で歯車が壊される状態が続くと、いずれ冗談抜きで世界が終わります。
世界が終わるということは今いるイエネコたちの未来も危うくなりますから、猫好きさんでノネコ計画に反対している人も、その点、今一度考えてほしいです。
奄美大島の生物多様性に猫は含まれない
日本では平安時代から以前より持ち込まれた”イエネコ”、長い間日本に居るのだから問題ないという声もありますが、イエネコはれっきとした外来種であり、生物多様性には含まれておりません。
そのため、奄美大島でも当然、生物多様性に含まれていないので、生物多様性の保全のためにはイエネコ、もっといえば森林で野生化したイエネコ=ノネコを駆除する必要があります。
「アマミノクロウサギは以前より増えているんだから、ノネコを駆除する必要はない!」
そんな声もありますが、奄美大島に存在する希少種はアマミノクロウサギだけではありません。
例えアマミノクロウサギが増えていたとしても、そのほかの希少種の存在が脅かされている以上は、奄美大島の森林からノネコを出してあげる必要があります。
>>ノネコの譲渡についてはコチラの「奄美大島における生態系保全のため捕獲したノネコ譲渡希望者の募集について」をご覧ください
殺処分が認められた国となってしまっていいのか
日本では殺処分が認められています。
ちなみに平成29年度では、犬が8,362匹、猫が34,854匹、計43,216匹が殺処分されています。
しかしおそらくこの質問は、
「世界遺産登録のための殺処分が認められたひどい国だと思われてもいいの?!」
ということだと思うので、これを元に答えます。
奄美大島は世界遺産を目指しているが、世界遺産がなくてもノネコ管理計画は必要
こちらについては、上で答えを書いているので省きます。
こちらをお読みください↓
生物多様性の保全のための対策は国外でもあること
生態系多様性の保全を頑張っているのは日本だけではありません。
海外でも生物多様性の保全のために外来種対策が行われています。
軽く調べただけでも、以下のような対策が行われていました。
国名 | 対策方法 | 参考サイト |
ニュージーランド | ・ネズミ、オコジョ、ポッサムなどの外来種を2050年までに根絶 ・哺乳類の駆除には罠や毒入りの餌を使用 |
コチラ |
オーストラリア | ・2020年までに野良猫を200万匹駆除 ・5つの島・本土10か所・1000万ヘクタールでノネコ撲滅 ・毒餌で野良猫を駆除(在来種が耐性を持つ毒を用いる) ・毒餌以外にも銃殺・トラップ捕獲・譲渡 |
コチラ |
イギリス | アセション島 ・猫のため減った野鳥のために野良猫を本土から排除 ・飼い猫はマイクロチップで管理 ・野鳥の巣をGPS技術でマークし記録 ・外来植物から在来植物を守る取り組み ・ウミガメなども観察して見守る フォークランド諸島 ・海鳥や爬虫類を食べるため外来種ネズミを駆除 |
コチラ |
インド | ・家畜用の薬である「ジクロフェナク」がハゲワシの死因であることが判明、ハゲワシ絶滅の対策で野生のハゲワシを保護し繁殖 ・その後ジクロフェナクは政府により製造禁止、ハゲワシにも安全な「メロキシカム」という薬も開発される ・ジクロフェナクのほうが安価なためメロキシカムを使う獣医が後を絶たなかったが、メロキシカムの特許元であるイギリスの会社が特許を手放しメロキシカムも安価で手に入るようになる(ハゲワシのために特許を手放した) ・隣国とも協力 |
コチラ |
特にイギリスの取り組みは孤島である奄美大島の例を想像しやすくなるので見てほしいです↓
この動画を見るとわかるとおり、在来種を守るためには殺処分もやむを得ないケースもあることがわかります。
しかし奄美大島では、殺処分ありきのノネコ捕獲ではなく、譲渡機関も設けていますから、是非奄美大島のノネコ引き取りができる人に声が届くように奄美大島の殺処分反対ではなく、ノネコ譲渡について呼びかけていただけたら幸いです。
>>ノネコの譲渡についてはコチラの「奄美大島における生態系保全のため捕獲したノネコ譲渡希望者の募集について」をご覧ください
アマミノクロウサギの数改ざんは世界遺産に登録したいがため
アマミノクロウサギは2003年の調べで2,000匹から4,800匹とされていましたが、2015年度の時点で約15,000匹から約39,000匹まで回復していると推定結果が出ていると朝日新聞から発表されています。
参考絶滅危惧アマミノクロウサギ、増加か 天敵駆除が奏功|朝日新聞
このことがあり、
「アマミノクロウサギの数を少なく見積もってノネコを排除する計画を立てているんじゃないか!」
という声がありますが、前の項でも解説した通り、奄美大島に生息する希少種はアマミノクロウサギだけではありません。
例えアマミノクロウサギが増えていようとノネコ対策は必要です。
>>奄美大島の希少野生植物についてはコチラの「希少野生動植物|奄美市」をご覧ください
猫はお腹がいっぱいならクロウサギを食べないはず
猫は食べる目的以外でも動物を襲う習性があります。
そのため、お腹がいっぱいであろうと山に放してしまうのはノネコ対策として十分ではないと言えます。
Cameron-Beaumont(1997)は、動物園の飼育係に対する調査から、飼育されている野生のネコ科動物の成獣では、人に対してミャーと鳴く、手でもむ、のどを鳴らすといった子獣に見られるような行動は一切見られなかったとしています。
こうしたことから彼は、上記行動を成熟してからも頻繁に見せるイエネコは、人に対して子猫のような振る舞い方をする「ネオテニー」(幼形成熟)を備えていると主張しています。彼に言わせれば、空腹かどうかにかかわらず狩猟行動を起こす「満腹狩り」も、子猫の見せる行動の一つだということです。
野生の猫は、ネズミなどの小動物や小鳥、昆虫などを捕まえては食べていました。生きるために狩りをしていたわけです。猫は他の大型肉食獣と異なり、お腹が一杯になっても目の前をネズミが走りぬけると追いかけて狩ってしまう習性があるようです。この事から、狩りへの欲求がとても高い動物であると思われます。
引用:ネコ講座|ネコジルシ
人に飼われている猫は満腹状態であっても、獲物を獲ると言われています。もとから持っている狩猟本能であると同時に、猫はいつまで経っても子供の気持ちで生きていると言えるでしょう。餌が用意されて、獲物を獲らなくても生きていける飼い猫になっても、猫の行動は、狩りをすることに結びついているのです。
「それでも満腹状態ならお腹が減っている時よりも狩りは減るはず」
という意見もありましたが、奄美大島にいる希少種の中には遊びの狩りだけでも絶滅してしまうような、個体数が多くない生き物もいます。
例えばオリイジネズミは奄美大島に生息していますが、個体数も少ないため未だに生態がよくわかっていない、そんな生き物もいるのです。
オリイジネズミ(折居地鼠、学名:Crocidura orii )は、トガリネズミ目トガリネズミ科ジネズミ属に属する哺乳類である。日本固有種であり、奄美大島及び加計呂麻島[1]、徳之島にのみ生息する。奄美大島で1922年に採集され、1924年に新種記載された。生息数が少なく、生態はあまりよくわかっていない。
また、徳之島の北と南で異なる遺伝子配列を持つアマミノクロウサギが確認されています。
参考近くて遠いお隣さん-生息地の分断により、わずか1㎞の距離でもアマミノクロウサギの遺伝子交流が絶たれる-|国立環境研究所
そのため奄美大島でも同じように異なる遺伝子配列を持つアマミノクロウサギが存在する可能性があります。
なので、アマミノクロウサギだけに限っても、ノネコの餌にしてしまうわけにはいかないのですね。
生物多様性条約によれば、生態系・種・遺伝子の多様性といった3つのレベルの多様性があるとしているので、同じアマミノクロウサギでも異なる遺伝子が失われるのは避けたいものです。
猫に簡単に捕まるほどウサギは弱くない
アマミノクロウサギは普通の野ウサギと比べると、手足が短く逃げ足も速いとは言えません。
とても弱い存在なので、猫も簡単に狩れる可能性が高いです。
(というか猫は狩りが上手なので、クロウサギからしてみたら太刀打ちできる存在ではないでしょう)
アマミノクロウサギ(奄美の黒兎)とは、奄美大島の固有種で国の天然記念物とされる ウサギ目ウサギ科アマミノクロウサギ属の小形の黒い野兎です。
国内希少野生動物種にも指定されています。 広葉樹林内の斜面や木の根元に穴を掘ったり岩の隙間に生息しています。 全身が黒っぽく、極めて原始的な形態を留めており、通常のノウサギに比べて 耳が短く、手足が短く丈夫で爪が発達しており、尻尾は短く目立ちません。
実際に猫がアマミノクロウサギの幼獣を狩った時の動画が公開されているので紹介します↓
そのほかメディアでも猫がアマミノクロウサギを狩った時の画像が公開されています↓
(画像を直接載せるのはためらわれますので、リンク先でごらんになってください)
アマミノクロウサギは、私たちが良く知るうさぎとは違い、暑い夏の繁殖を避け、うむ子供も1匹、多くて2匹ですから、1匹の幼獣が捕食されるだけでも大打撃です。
また、アマミノクロウサギでなくても猫はウサギを捕食可能です。
ノネコによる野生動物の補食の写真といえばアマミノクロウサギが襲われているのが有名ですが、本州のノウサギが襲われている写真が岐阜県の宮村史に掲載されていました。 pic.twitter.com/QrqC3fj8iL
— MUKAI, Takahiko (@takahiko_mukai) 2019年5月7日
猫はすごい生き物です。
時速48kmで走ると言われているくらいの敏腕ハンター、それが猫です。
「あんなにいつも寝ている動物なのだから、ウサギだって猫から逃げられるはず」
そう思うかもしれませんが、猫は実際、日本以外でも希少種を絶滅に追いやっている生き物に他なりません。
ウサギが弱いかどうかではなく、猫がすごいんですよ。
ノネコとノイヌも希少種だから殺すな
残念ながらノネコとノイヌは希少種ではありません。
希少種の意味を見てみましょう。
希少種 (きしょうしゅ)
存続基盤が脆弱な種または亜種で、1)生活環境が変化すれば、容易に絶滅危惧種、危急種に移行するような要素をもつもの。2)生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっているもの。3)分布域の一部で個体数の減少や、生息環境の悪化などの傾向が強いもの、あるいは今後さらに進行するおそれのあるもの、などをいう。引用:希少種|weblio
つまり希少種には、以下のような特徴が必要なのです。
- 生活環境の変化で簡単に絶滅危惧種や危急種になるような要素を持つ
- 生息状況の推移から種の存続が圧迫されている
- 分布域の一部にて、個体数減少・生息環境の悪化の傾向がある
これをノネコにあてはめてみましょう。
ノネコの種類はイエネコです。
つまりイエネコが①、②、③に当てはまるかどうかですが……
- イエネコは日本のどこにでもいる動物です。生活環境が変わっても簡単に絶滅しません。(分布図はコチラ)
- むしろ各地で殺処分されている状況なので、種の存続圧迫はないです
- ②と同じ理由でないです
命に貴賎はないということを言いたいのでしょうが、奄美に存在する希少種は、奄美大島の気候や自然があり始めて生きながらえられる生き物です。
もしノネコの命を救いたいのなら、どうかノネコ譲渡を呼び掛けてください。
>>ノネコの譲渡についてはコチラの「奄美大島における生態系保全のため捕獲したノネコ譲渡希望者の募集について」をご覧ください
ウサギも大切だから生態系を崩さない対策を取れば良いだけ
逆に、生態系を崩さない案があればご教授願います。よろしくお願いします。
どうして奄美大島でノネコ対策をする必要があるのかは以下をご覧ください。
猫を処分したらクロウサギが増えて生態系が崩れる
本来いるはずのない猫を奄美大島の森林から排除することで、本来の姿にぐっと近づきます。
また、アマミノクロウサギは通常のうさぎとは違い、1回のお産で1羽、または2羽の出産です。
通常のうさぎのように爆発的に増えるわけではありません。
アマミノクロウサギの死因の原因は100%交通事故
アマミノクロウサギの死因の多くは死因不明です。
奄美野生生物保護センターの記事で、月別のアマミノクロウサギ死体確認件数とその死因(2000~2013年)が載っていたので紹介します。
見てわかる通り、交通事故が100%ではありません。
奄美大島にはノネコのほかにもハブやマングースがいますし、台風が毎年数多くやってくる中で、もし本当にアマミノクロウサギの死因の原因が100%交通事故なら、アマミノクロウサギのポテンシャルはかなりのものです。
が、実際のアマミノクロウサギの死因原因の多くは不明です。
もしクロウサギが食べられた場合、クロウサギの体は残りようがないですよね。
ノネコがアマミノクロウサギを食べているかどうかは、
↑こちらの13ページに詳しく載っていたので紹介します。
合計 102 個(2009 年:22 個、2010 年:57 個、2011 年:23 個)のノネコの糞が採取され、分析された。
(中略)
ノネコの糞から検出された哺乳類は 5 種で、うち 4 種が環境省によるレッドリスト(環境省 2014)に掲載されている絶滅の恐れのある希少種であった(表 2‐1)。哺乳類の中では、ケナガネズミ(43.1%)の出現頻度が最も高く 、外来種のクマネズミ(39.2%)、アマミトゲネズミ(38.2%)と続いた。この 3 種よりは少ないがアマミノクロウサギ(15.7%)も、ノネコの糞から検出された。
引用:奄美大島における外来種としてのイエネコが希少在来哺乳類に及ぼす影響と希少種保全を目的とした対策についての研究( Dissertation_全文 )
アマミノクロウサギが一番食べられているわけではありませんが、それでも食べられていることには変わりありません。
また、奄美大島はアマミノクロウサギ以外の希少種も多数生存している島ですから、例えアマミノクロウサギの死因が100%交通事故であったとしても、ノネコ対策しなくて良い事にはなりません。
(アマミノクロウサギの死因が交通事故というのは100%ありえませんが……)
追記アマミノクロウサギのロードキルについて貴重な資料を教えていただきました!ありがとうございます!
既存の外来種研究によると,マングースは,その定着域において本種の消失を引き起こす極めて高いインパクトを引き起こしたが(Watari et al. 2008),森林内でマングースによって捕殺された本種の死体がみつかったケースはほとんどない.
(中略)
今回回収されたアマミノクロウサギにおいて,ロードキルは特定された死亡要因の中では,最も大きな割合(22.6%)を占めた.しかしながら,今回研究対象とした死亡個体は,基本的に道路上,あるいは道路周辺で発見された個体がほとんどを占めるため,当然ながらその死因は道路上で生じるロードキルにバイアスがかかるはずである.
※バイアスがかかる:先入観にとらわれている。色眼鏡で見る。(コトバンクより)
つまりロードキルで見つかる死体が多くなるのは当たり前のことであり、食べられたら死体は残らないので見つかりづらいという資料です。このことからも、アマミノクロウサギの死因100%が交通事故というのは間違いであるとわかります。
ちなみに断定できた死因の原因が100%だから、そう書かれているのだとも教えていただきました…!なるほど、言葉遊びのようですね。
参考奄美大島におけるアマミノクロウサギ Pentalagus furnessi のロードキル
奄美を猫の島にして観光客を増やせばいい
観光客を呼び込むためのノネコ管理計画ではありません。
こちらを今一度お読みください。
農作物の被害が拡大したらクロウサギが害獣になる
アマミノクロウサギによる食害はすでにありますが、対策も立てられているところです。
アマミノクロウサギは未だに生態が良く分かっていない生き物なので、
- どうしてタンカンを食べるのか
- どういうものが嫌いなのか
など解明されておりません。
そのためまだこれといった対策があるわけではありませんが、生物多様性の考えが広まっている今、安易にアマミノクロウサギを害獣であると決めつけるようなことは起きないでしょう。
また、ノネコ管理計画はアマミノクロウサギを増やすためだけに作られた計画ではありません。
奄美大島に存在する希少種を守る計画ですから、
「もしクロウサギが増えたら害獣と呼ばれる」
という話はそもそも論点が違うのです。
まとめ
この記事では、奄美大島で行われているノネコ管理計画に反対している人のブログから疑問点を抽出して勝手に答えました。
記事を書いたのは、この問題について私が理解を深めたかったのと、単純に誤解を解けるなら解いて、譲渡を呼び掛けてほしいなと考えたからです。
ただ、まだまだ勉強中の身ですので、記事中の話題について私にも理解できていない箇所や、理解が違っている個所があるかと思いますので、
「ここ違うんじゃね?」
と思ったら是非こっそり教えてください。よろしくお願いします!