奄美でもやっと梅雨が明けまして、とうとう本格的な海日和がやってきたと喜んでおりますが、梅雨明けしてもちょっと怪しい天気が続いている奄美大島です。
こんにちは。
今回のノネコ管理計画を読み解こうはノネコ管理計画の4ページ目にある「7.管理計画の目標達成のために必要な活動及び実施体制等」の「7-1.希少種生息域(森林内)からのノネコの捕獲排除」を解いていきますよ。
また1、2、3と同じような話が出てくるかもしれませんがご容赦くださいね!
ではいきましょう。
ノネコ管理計画を読み解こう一覧
ノネコ管理計画
7.管理計画の目標達成のために必要な活動及び実施体制等
7-1.希少種生息域(森林内)からのノネコの捕獲排除ー(1)体制
(1)体制
環境省、鹿児島県、奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町、龍郷町が役割分担をして実施する。捕獲・モニタリングは環境省が、捕獲個体の収容施設の整備は鹿児島県の補助事業を活用し、奄美市等5市町村で構成する「奄美大島ねこ対策協議会」が、捕獲個体の一時飼養等は同協議会が実施することを基本とする。
ノネコ管理計画は誰がするのか、ということが書いてありますね。
表にまとめてみるとわかりやすい↓
Q | A |
ノネコ管理計画に携わっている、実施するのは? |
環境省、鹿児島県、奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町、龍郷町が役割分担をして実施 |
捕獲・モニタリングは誰が? |
環境省 |
捕獲個体の収容施設の整備は誰が? |
奄美大島ねこ対策協議会 |
捕獲躯体の一時飼養は誰が? |
奄美大島ねこ対策協議会 |
捕獲・モニタリングは環境省から委託された「株式会社奄美自然環境研究センター」が実施しています。
ここらへんは「3.「3.対象地域」「4.管理計画の期間」「5.管理計画の目標」「6.基本方針」」で話した通りです。
3.では費用の内訳にも軽く触れていますので、気になる方はどうぞ(^▽^)/
7-1.(2)実施地域
(2)実施地域
奄美大島の森林内
ノネコ管理計画を実施する地域は奄美大島の森林内であるということですね。
奄美大島における伐採地を含めた林野面積は全体の85%(石田健・杉村乾・山田文雄. 1998. 奄美大島の自然とその保全. 生物科学 50(1): 55-64.)とありますが、このすべての地域にカゴ罠がしかけられているわけではありません。
詳しい場所は明かされていませんが、どれくらいの作業面積であるかなどは「令和元年度奄美大島における生態系保全のためのノネコ捕獲等に係る検討会」で触れられていましたのでご紹介します。
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【レポ】ノネコ捕獲等に係る検討会に行ったので感想とか内容を覚えている分だけ書いてみる
会場があった文化センターは工事中でした 令和元年12月24日火曜日、13時半~15時まで奄美文化センターにて「令和元年度奄美大島における生態系保全のためのノネコ捕獲等に係る検討会」(名前 ...
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ノネコ管理計画の捕獲作業面積は2019年5月~6名で約80平方km
「令和元年度奄美大島における生態系保全のためのノネコ捕獲等に係る検討会」では、ノネコ捕獲作業について捕獲作業体制の拡充状況についても話されていました。
そのうちの表の一部をこちらにも載せます。
<捕獲作業体制の拡充状況>
作業員 | 作業面積 | わなの数 | |
2018年7~12月 | 3名 | 約16平方km | 150 |
2019年1~4月 | 4名 | 約32平方km | 200 |
2019年5月~ | 6名 | 約80平方km | 300 |
奄美大島は712平方kmですので、約9分の1の面積の場所にかご罠をかけているということですね。
最初は3人で約16平方kmだったのが、今は3名の2倍=6人で、5倍の約80平方kmの作業にあたっているのですからすごいですよね。
かご罠に猫が入っているかどうかは毎日の見回りで確認されています↓
作業員六名により、全ての稼働わなについて、一日一回、実際に猫がわなにかかっているかどうか、こういったことにつきまして確認をしているところでございます。
とんでもない作業量ですよね。
どうして捕獲場所が明かされていないのか?※個人見解ですので飛ばしても◎
「どうして捕獲場所が明かされていないのか!」
という声も見たことがあるのですが、理由は割と簡単に思い至れます。
それは「捕獲場所を明かして万が一向かわれた時に行方不明や怪我をされても困るから」です。
これは私の考察でしかありませんので、くれぐれも公式見解として受け取らないで欲しいのですが、まず大前提に奄美の山はとても険しく危険であり、毒蛇も居るという事を頭に入れてほしいです。
車が通れる山道(林道)も中々大変↓
ハブに遭遇できる奄美の山は危険なんです
奄美大島の毒蛇といえばハブですが、ハブがどれくらいすごい毒蛇なのかというと↓
ハ ブ咬傷による被害は,ハブがマムシに比して大きいことにもよるが,咬 傷部位の著るしい腫脹,出血,筋肉の変性壊死をひきお こし,住女にして,損傷部位からの切断等の不幸な結果を招くこともあり,島民のハブへの恐怖 は,予想以上に強いことが報ぜられてい る。
引用:ハブ毒の研究
まあ、怖いです。
血清があると知っていても噛まれたら死ぬと思ってるくらい怖いです。
小さなころからハブは怖いものだと刷り込まれている身としては、ハブってかっこよくて好きではあるんですけど、やっぱり怖いヘビなんですよね。
さすが奄美大島の生態系トップなのですが、ハブと遭遇確率のある山というのは危険でしかありませんし、猪もいますので重ねて危険です。(猪は結構気軽に目撃できるあたり怖いですね)
危険だと言っているのに人によってはわかってくれない
そんな山であることをこうやって文面でお話したところで、分からない人はわからないんですよね……。
いくら言ってもわからない人が居る中で、ノネコの捕獲場所が明かされたらどうなるでしょうか。
奄美のノネコ管理計画反対の署名はただいま8万余り集まっていますが、その中に無謀な方がいないとも限らないんですよ。
そんな無謀な方が万が一気軽に山へ入り、ノネコの捕獲場所を見に行こうとすると大変な事態になりかねません。
山に慣れている人でも遭難する可能性のある深い山なので、危険回避のためにも捕獲場所は明かさない方がいいのです。
猫を捨てに来る人がいても困る
また、地域猫やTNRをしているところに住む方ならわかってもらえるかもしれませんが、「ここなら猫を捨ててもどうにかしてくれるかも」とやって来る人がいると困るんですよね。
奄美に絶対そういう人がいる、と断言はできませんが、万が一を考えなければなりません。
万が一、ピンポイントで捕獲場所に捨てに来た場合はやはり上記に書いた理由で危険ですし、キリがなくなってしまうためやはり捕獲場所は明かさない方が良いのです。
(3) 捕獲・モニタリングの進め方
(3) 捕獲・モニタリングの進め方
ノネコの分布等生息状況をセンサーカメラ等でモニタリングし、捕獲については希少種保護上の重要性とノネコの分布状況を踏まえて希少種への影響が特に大きいと考えられる地域から優先順位をつけて進めるなど、効果的効率的な捕獲に努めることとする。また同時に、在来種の生息状況もセンサーカメラ等でモニタリングする。モニタリングについては、マングース防除事業など他事業において得られるデータの活用や、目撃情報の収集活用など、効率的な方法に留意して実施することする。なお森林内のネコはノネコがほとんどと推測されるものの、一部には、一時的に森林内に侵入しているノラネコや飼い猫も捕獲される可能性があるが、これらも希少種等を捕殺して在来生態系へ影響を及ぼすおそれがあることから本計画に基づき対処する。
ここにはどうやって捕獲場所を決めるか、データをどのように活用するか、ノラネコや飼い猫が捕獲された場合はどうするかが書かれています。
どうやって捕獲場所を決めるか
ノネコの分布等生息状況をセンサーカメラ等でモニタリングし、捕獲については希少種保護上の重要性とノネコの分布状況を踏まえて希少種への影響が特に大きいと考えられる地域から優先順位をつけて進めるなど、効果的効率的な捕獲に努めることとする。また同時に、在来種の生息状況もセンサーカメラ等でモニタリングする。
センサーカメラでモニタリングした後に、希少種エリアとノネコの分布状況をみて、影響が大きい地域から優先順位をつけて進めますよと書かれていますね。
効果的効率的な捕獲に努めるとあるため、日々柔軟にやり方を変えて効率的に頑張るよ!というのも読み取れますね。
そして在来種の生息状況もモニタリングするとあるので、ノネコを捕獲してからどのような変化があったのかも今後わかるかもしれませんね!
センサーカメラって?
センサーカメラについては日本自然保護協会のサイトに書かれていた文を引用します。
センサーカメラは、哺乳類などの動物が前を通るとセンサーが反応し、自動で撮影を行うカメラで、野外の哺乳類調査などに使われます。
(省略)
センサーカメラは一度設置すると電池とメモリが持つ限りずっと撮影を続けてくれるため、その場に生息する動物の情報を長期間集めることができます。
引用:日本自然保護協会
便利ですね!
人が見張るよりも無機質なセンサーカメラのほうが野生動物やノネコも警戒しないでしょうから自然な生息状況が把握しやすそうです。
センサーカメラがあれば正確な数値を割り出せるのか?について
ただセンサーカメラがあるからと、正確な数は割り出せない(どの生き物もそう/当たり前ですね笑)ので、「絶対にこの数なんですか?!」といった声もたまにありますが、この意見、言う前にちょっと思いとどまってほしいですね。
例えば私たちは自分の家に住む虫の数すら把握できないじゃないですか。
なのに山ですよ、山。
山に居る生き物の正確な数値を割り出すって、アニメみたいにその土地をスキャンして割り出す技術が出てこない限りは難しいですよね(使用料もめちゃくちゃかかりそうだし)。
生きものって、日々産まれ死んでいるので当然毎日減って増えての繰り返しなんです。
毎日、毎時間、毎分ごとに数が違ってくるのに、正確な数を求められると思いますか?
ですからセンサーカメラでのモニタリングで出たおおよその数値に「何故、正確な数が割り出せないんですか?」という質問をする前にちょっとだけ考えてみてください。
または、家に住んでいる生きものの正確な数を割り出せる方法を発見し、山に応用できそうなら提案してみるのも良いかもしれません。
(↑正確な数を割り出す方法がわかればめちゃくちゃ便利なので是非!期待しています!)
ノネコの分布状況は比較的わかりやすい
猫は柄があるので、識別しやすいです。
「奄美大島における外来種としてのイエネコが希少在来哺乳類に及ぼす影響と希少種保全を目的とした対策についての研究」にどのようにノネコの分布状況をみたのか載っていたので引用してみますね↓
特に個体によって体毛の柄が異なるネコ科の動物やツキノワグマでは、写真による個体識別が可能であり、撮影回数や撮影範囲などからより正確な個体数推定が可能となっている。
生きものの正確な数値は出せないものですが、柄がわかりやすい生き物は正確な個体数推定が可能だとのことですね!
(推定=はっきりしないことについて、このようであろうと一応の判断をする意(weblio)とあるので、絶対的な個体数というわけではないです。)
方法としては↓
奄美大島の山中に生息するノネコの生息分布の把握および個体識別を行うために、環境省奄美自然保護管理事務所によって提供された奄美マングースバスターズによるフイリマングース根絶事業のために設置された自動撮影カメラによる撮影データを使用した。
(中略)
用いたデータの撮影期間は、通常設置データでは 2011 年 4月 1 日~2014 年 3 月 31 日、高密度設置データでは 2012 年 8 月 17 日~2014 年 3 月26 日である。自動撮影カメラの設置状況は、市町村および年度によって異なる(表 3‐1)。また高密度設置カメラは、奄美大島龍郷町および奄美市名瀬地区にのみ設置された。
(中略)
自動撮影カメラが設置されたメッシュ数に対しノネコの撮影が確認された割合を算出した。またノネコの写真は、体毛の色・柄および体格の特徴(体型や尾の長さ等)により個体識別を行った。個体識別されたノネコは月別に集計し、年度ごとの月別確認個体数の変動をピアソンの相関関係を用いて分析した。
まとめると、
- マングースバスターズのセンサーカメラを使ってノネコの数を調べたよ
- 2011年4月1日~2014年3月31日のデータと、高密度設置データは2012年8月17日~2014年3月26日のデータを使ったよ
- 設置されたメッシュ数からノネコ撮影が確認された割合を出したよ
- ノネコの写真は体毛・色・柄・体格などの特徴で個体識別したよ
- 個体識別したノネコは月別に集計して、年度ごとの月別確認個体数をピアソンの相関関係を用いて分析したよ
ということですね!
ピアソンの関係がよくわからなかったので調べたんですけど、要は個体識別されたノネコの月別集計と年度ごとの月別確認個体数、一方に変化があったときもう一方にも変化があるかっていうのを分析しましたよという事のようですね(間違ってたらどうしよう)。
ただ「ここにノネコがいる!」というのがわかればいいのなら個体識別は必要ありませんが、個体識別することにより「このノネコはまだ捕まっていない」や「見ない顔だ……もしかして流入してきている?」もわかりますし、首輪をしていたら外飼いされた猫が山へ入っているかどうかもわかるので、なかなか丁寧です。
その場限りのモニタリングではなく、先のことまで考えたモニタリングですね!
希少種への影響が大きいところから捕獲を進める理由
このモニタリングで希少種などと生息域がかぶっている地域を優先して捕獲を進めると書いてありますが、私は再三「ノネコ管理計画は生態系保全の計画だ」という話をしているので、人によってはこの「希少種への影響が大きいところから捕獲」に違和感を感じるかもしれません。
「やっぱり希少種が大切なだけじゃないか!」
と思うかも?
しかしですね、希少種は後がないので優先されるのも致し方ない部分があるんですよ。
限定された場所にしかいない希少種というのは、ただ滅ぶそれだけでこれから先一生、その生き物とは会えないしその生き物が埋めてた生態系のピースも空いたままということなんです。
だから希少種とノネコのエリアがかぶっている場所は緊急性が高いという意味で優先にならざるを得ないんですよね。
勿論、他の土地にも生息している生き物だから猫に食べられ奄美で滅んでもOK~!ってことは全くなく、わかりやすい希少種を優先してはいますが、希少種だけ守っているということではないのでそのへんは分かってもらえると嬉しいですね。
モニタリングについて
モニタリングについては、マングース防除事業など他事業において得られるデータの活用や、目撃情報の収集活用など、効率的な方法に留意して実施することする。なお森林内のネコはノネコがほとんどと推測されるものの、一部には、一時的に森林内に侵入しているノラネコや飼い猫も捕獲される可能性があるが、これらも希少種等を捕殺して在来生態系へ影響を及ぼすおそれがあることから本計画に基づき対処する。
モニタリングはマングース防除事業や他事業のデータを活用して、さらに目撃情報や収集活用で実施していくよ、森林内に侵入しているノラネコや飼い猫も捕獲したら本計画に基づいて対処するよ、と書いてありますね。
モニタリングについては上で紹介したモニタリング方法+目撃情報なども使って効率的に頑張るよとのことですね!
ノネコ管理計画なのにノラネコや飼い猫も計画に基づき対処されるのは何故?
「捕獲されているのは野良猫や飼い猫だ!」
という声がたまにありますが、ノネコ管理計画にはそもそも
ノラネコや飼い猫も捕獲される可能性があるが、これらも希少種等を捕殺して在来生態系へ影響を及ぼすおそれがあることから本計画に基づき対処する。
と書いてあるので、捕獲されたのが野良猫や飼い猫であっても、ノネコ管理計画に基づき対処されるんですよね。
そして対処される理由というのが、野良猫や飼い猫であっても山に入れば希少種などを捕殺し、在来生態系へ影響を及ぼしてしまう可能性が高いからなんですね。
ノネコ、野良猫、飼い猫は全て同じ種であるイエネコです。
呼び方が違うだけで同じ性質を持った同一の動物なんですよ。
なので、ノネコだけが山の生きものを食べ、飼い猫や野良猫は山に入っても殺さないということはありませんし、よくツイッターでも「うちの猫ちゃんがお土産を持ってきてくれました💦」といったようなツイがあるように、猫はノネコ・野良猫・飼い猫、どんな立場であれ優秀なハンターである一面がなくなることはありません。
ですから、野良猫や飼い猫であっても猫の性質を考え本計画に基づき対処するとなっているわけですね。
山に通っている野良猫や飼い猫はノネコ発生源にもなりかねないので、その意味でも対処は必要です。
ただ飼い猫については飼い猫とわかった時点で飼い主が分かり次第引き渡しを行いますので安心してください。
詳しくは次で!↓
(4)捕獲後の対応
森林内で捕獲したネコは野外に再放逐すれば再び森林内に戻り希少種や在来生態系へ影響を及ぼす可能性があることから、捕獲個体は野外に戻さないよう対応する。*3
捕獲個体のなかに、鑑札やマイクロチップなどにより飼い主が確認できる個体がいた場合は飼い主へ引き渡しを行う。首輪を装着しているなどの個体がいた場合は、地元役場にて1 週間公示し、飼い主確認を行う。公示後、飼い主が確認できた場合には、飼い主へ引き渡しを行う。飼い主が確認できなかった場合は、所有者が判明しないネコとして県が引き取る。
上記以外の個体については、飼養を希望する者への譲渡に努め、譲渡できなかった個体は、できる限り苦痛を与えない方法を用いて安楽死させることとする。
飼い主へ引き渡しを行う又は譲受希望者へ譲渡する際は、奄美大島内においては動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動愛法」)及び5市町村の「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」(以下「条5例」)を遵守するとともに完全に室内で飼養することを、また奄美大島外においては動愛法及び各市町村条例等に則って適切に飼養することを指導し確認した上で引き渡し等を行う。
*3:同じく奄美群島内の徳之島でも希少種保護を目的として森林内のノネコを捕獲排除するノネコ対策を実施しているが、森林内での捕獲個体は野外に戻すことがないよう対応をとっている。
ここには捕獲後の対応が書かれています。
分けてみていきましょうね。
森林内で捕獲した猫は放さない(TNRしない)
森林内で捕獲したネコは野外に再放逐すれば再び森林内に戻り希少種や在来生態系へ影響を及ぼす可能性があることから、捕獲個体は野外に戻さないよう対応する。*3
*3:同じく奄美群島内の徳之島でも希少種保護を目的として森林内のノネコを捕獲排除するノネコ対策を実施しているが、森林内での捕獲個体は野外に戻すことがないよう対応をとっている。
森林内で捕獲した猫は、また外に放すと森林内に戻って影響を及ぼす可能性があるから野外に戻さないよ、ということですね。
徳之島でも森林内で捕獲した個体は野外に戻していないと書かれています。
ノネコ管理計画では、何故か「TNRじゃダメなのか!」という声がいくつも上がるのですが、ノネコ管理計画には既にその答えが書かれていたわけです。
Q.何故奄美の山で捕獲した個体はTNRじゃダメなのか?
A.山に戻り希少種や在来生態系へ影響を及ぼす可能性があるからだよ!
TNRは避妊去勢をすることにより、穏やかに個体数を減らすための方法として全国のあちこちで実施されている策ではありますが、正直TNRの目標であるはずの「個体数0達成」した場所はありません。
(TNRは0猫目標ではないという見解もありますが、奄美の山に対してTNRを勧めている方はTNR=解決と言っているのですなわちTNRでいずれ0匹になると言っているのだと受け取っています。)
つまりTNRが成功した例がないのに、猫の影響を受ける可能性がある奄美の生態系に試験的にTNRをした猫を置くわけにはいかないんですよね。
上でもお話しした通り、希少種は滅びればあとがありませんし、希少種でなくても奄美の生態系に組み込まれている生き物が滅びればやはり、どこかしらほつれていき生態系が崩れてしまうことになりかねません。
(※ノネコが影響を与えるかもしれないから管理計画がある、という話についてはこちら「ノネコ管理計画を読み解こう1.「表紙」「1.はじめに」」をご覧ください。)
TNRは現実的ではない、ということなんですよね。
また、山で狩りをした猫なら「山には食べ物がある」と学習していますから、もし山ではなく町中でRされてもご飯が見つからなければ山へ行ってしまうでしょうし、町でご飯を食べても場合によっては山で狩りをする猫も現れるかもしれません。
(徳之島の猫を調べたところ、人に依存している猫も山の生きものを食べているという論文が出ています。詳しくはコチラ「2019年11月11日 徳之島の外ネコ問題」を参考にされてください。)
奄美は集落や町と山が近いので山へ入るのがとても簡単なんですよ。
現に小学生が迷子になっていつの間にか山に入っていたということも過去にあったくらいの奄美なので、「ご飯を食べるぞ」という目的を持った猫が山へ目指したなら簡単に入れてしまいます。
だからこそ山で捕獲された猫はRできないんです。
飼い主が居るとわかった猫について
捕獲個体のなかに、鑑札やマイクロチップなどにより飼い主が確認できる個体がいた場合は飼い主へ引き渡しを行う。首輪を装着しているなどの個体がいた場合は、地元役場にて1 週間公示し、飼い主確認を行う。公示後、飼い主が確認できた場合には、飼い主へ引き渡しを行う。飼い主が確認できなかった場合は、所有者が判明しないネコとして県が引き取る。
ノネコ管理計画ではありますが、ノネコだけを選んで捕獲できるはずもないので、中には外飼いされている猫が捕獲されてしまうこともあるでしょう。
その場合は、
- 鑑札
- 首輪
- マイクロチップ
などで飼い猫かどうか見極め、地元の役場で1週間公示して飼い主確認を行うようにしてますと書かれていますね。
飼い主が分かった場合は飼い主へ引き渡しますし、確認できなかった場合は所有者不明として県が引き取るとされています。
奄美では飼い猫登録が義務付けられています
奄美では「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」が定められているのですが、この条例により飼い猫の登録が義務付けられています。
登録は各総合支所で受付しており、飼い猫1匹につき500円の登録手数料が必要で、そのさいに鑑札が交付されます。
マイクロチップ装着も義務になっているので、もし山で飼い猫が見つかった場合も判別できるので安心ですね。
ただ、飼い猫の登録率は100%ではないので、マイクロチップや鑑札をつけていない外飼いの猫が捕まる可能性もありますが、もし登録されておらずマイクロチップも入っていない場合でも首輪をつけていたりするでしょうし、外飼いであっても何日も帰ってこなければ当然、心配になり市や保健所にも連絡するものですよね。
なので、もし飼い猫登録がまだの飼い猫が捕獲された場合でも見極めることは可能かなと考えます!(そもそも飼っているのに飼ってますの意思表示もなく帰ってこなくても気にかけてもらえない飼い猫がいるのでしょうか?)
「ペット」というキーワードで検索すると
愛玩動物のこと。大切にかわいがるために飼育されている動物をいう。
引用:ペット|コトバンク
と出るくらいですから、飼っている・飼育している猫を大切に可愛がるために外飼いであっても何かしらの対策はしているでしょうし、大切にするということは気に掛けるという事でもあるので、やはり飼い猫であれば居なくなった時に探すでしょう。
実際に2019年11月までに2頭の飼い猫が捕獲されていますが、そのうち1頭は公示後飼い主に返還されていますし、1頭は公示後に譲渡されています。
でもまあ、やっぱりマイクロチップ入れるのが確実!
マイクロチップ率じわじわ上がってきているの止まらずに上がり続けてくれたらいいなと思っています!頼むぞ!
飼い猫ではない捕獲された猫について
上記以外の個体については、飼養を希望する者への譲渡に努め、譲渡できなかった個体は、できる限り苦痛を与えない方法を用いて安楽死させることとする。
飼い猫以外の猫、つまりノネコや野良猫は希望する人への譲渡に努めて、譲渡できなかった場合はできるだけ苦痛を与えない方法を用いて安楽死させるとあります。
譲渡に努めとあるため、できるだけ譲渡に努めてそれでも譲渡できなかった場合は安楽死になるという話ですね。
殺処分前提の計画ではありません
ノネコ管理計画は「ノネコ殺処分計画」と揶揄されることがしばしばありますが、”譲渡に努め”とある以上、ノネコ管理計画は譲渡ありきの計画です。
確かに安楽死の文字はインパクトがありますし、パッと見ると反射的に「なんで安楽死するんですか?!」という気持ちになるのもわからないでもないのですが、しかしちゃんと読んでみると”譲渡に努め”という大切な部分も書かれているんですよ。
ここ、とっても大切。
捕獲される猫にとっても、猫に死んでほしくない人にとっても大切な”譲渡”という道があると記されているところなのに、なぜか安楽死の部分だけ目立ってしまって全く違う計画として広められちゃっているんですよね。
もし本当に殺処分計画であれば譲渡もない
もしですよ、本当に殺処分計画であれば殺処分をする計画になりますから譲渡もないわけです。
マングースなんて、「ハブを食べてくれるから!」と人都合で放たれたのに生態系を壊すことがわかったから人都合で防除する流れになったにも拘わらず、譲渡はなし、捕獲の時点でつつ罠を使っているので死しか待っていません。
人都合という点では同じマングースとノネコなのに、猫だけは譲渡の道があるんですね。
言ってしまえば譲渡さえされたら殺処分はないのですから(これは全国の殺処分されている犬や猫にも言えることですが)、「安楽死をやめろ!」ではなく、できたら譲渡の道があることを広めてほしいですね。
それに殺処分計画よりも、譲渡前提の計画の方がコストがかかりますので、猫を殺したい計画ならそもそもコストをかけてまでわざわざ捕獲して譲渡なんてしないでしょう。
険しい山に入り、罠稼働中は1日1回の見回りをして猫を捕獲しているのは猫を譲渡するため他なりません。
ノネコ管理計画は殺処分計画なんかじゃありませんよ。
ノネコ譲渡者募集中です!
ノネコを譲渡されるには、譲渡者になるか譲渡者から譲り受けるかの2択になります。
もし譲渡者になりたい場合は、奄美市の「奄美大島における生態系保全のため捕獲したノネコ譲渡希望者の募集について」のページをご覧ください。
徳之島のように殺処分ナシでも良いのではないか?という意見について
徳之島でもノネコが捕獲され、捕獲された猫は譲渡者が現れるまでニャンダーランドという施設で「ずっとのお家」ができるまで待つこととなります。
と聞くと、「奄美でもやればいいやん!」思うかもしれませんが、実際これは良い事なんでしょうか。
ニャンダーランドは実際どうなのか、新聞に記載がありましたのでみてみると↓
天城町のノネコ収容施設「ニャンダーランド」の運営では「譲渡数が減少し、収容力が限界」
実は徳之島のニャンダーランド、譲渡数が少なく収容力が限界なんですね。
徳之島のノネコ推定数は↓
徳之島の森林部に分布するノネコの個体数は150~200匹程度と推測(同省、2014年度)。
奄美のノネコ推定数の4分の1~8分の1ほど、それでも収容力に限界を感じているという事は、本当に譲渡数が少ないんでしょうね。
安楽死の項目がある奄美とない徳之島

これが奄美だよ
徳之島と奄美のノネコ、どちらも離島のノネコですが、違う所と言えばやはり「安楽死」の項目があるか、ないかです。
安楽死の項目がない徳之島ではノネコの譲渡者が減少、逆に安楽死の項目がある奄美大島では譲渡されている状況ですから、これで奄美も安楽死の項目をなくせば譲渡者が減るのは目に見えています。
現に、「殺処分させない!」と動いている譲渡者さんも居ますので、安楽死の項目がなくなれば殺処分がないということになり、捕獲された猫の譲渡先もなくなってしまうかもしれませんね。
奄美のノネコは推定600~1,200頭、徳之島のように全て収容施設で面倒を見るとなるといっきにキャパオーバーしてしまうでしょうし、行政が多頭崩壊なんてことになったら目も当てられないですよね……。
更に「山に捨てれば猫の面倒を見てもらえる」と勘違いした人が捨てに来る可能性だって無きにしも非ずで、更に状況が悪くなってしまう可能性も。
というか、全国の保健所で安楽死の項目が何故あるかを考えると、何故ノネコ管理計画にも安楽死の項目があるかわかるかもしれません。
生き物を買うにはお金と人員が必要
猫に限らず生き物を飼うにはお金と人員が必要です。
猫は野良猫だと5年ほどの寿命だと言われていますが(最近はもっと長いという話もありますが)、飼い猫は15年ほどと言われています。
「猫を飼うのにかかる費用は生涯(一生)でどれくらい?」という記事の
アニコムの年間支出調査で猫にかける年間費用の総額は158,680円でした。およそ16万円として、猫の平均寿命の15年間この費用がかかるとすると、猫の生涯にかかる費用は約240万円に。病気の治療などでもっと高額になることもあれば、ペットホテルやシッターを利用しないなど、飼い方によってもっと抑えられることもあります。
を参考に猫1頭あたり240万円必要だとすると、全国の保健所に収容されている猫を最高15年(長生きの猫はもっと)生かすとなればとてつもない額の税金が必要になることに。
奄美のノネコで考えても推定600~1,200頭、そのうち譲渡されなかった猫に240万円+人件費がかかってくるので結構な額になるでしょうね。
徳之島のことを考えるとキャパオーバーになる数を世話することになると思うので、1匹1匹を見てあげられず本当にただ生きているだけの状態にもなるかもしれませんね。
正直、たくさんの猫を養って幸せにしていける余裕が奄美にもないんですよね。(奄美にもないし、他の地域もあるとこのほうが少なくない?の意)
安楽死はもちろん、悲しいことではありますし私も嫌ですが、しかし生きてさえいればそれでいいなんてことも思いません。
それに安楽死があるからこそ譲渡の声が上がっているのも現実ですから、色々な面から「安楽死の項目は本当に外すべきか」を考えてみてほしいですね。
譲渡する場合の条件

確かここは倉崎海岸かなあ
飼い主へ引き渡しを行う又は譲受希望者へ譲渡する際は、奄美大島内においては動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動愛法」)及び5市町村の「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」(以下「条5例」)を遵守するとともに完全に室内で飼養することを、また奄美大島外においては動愛法及び各市町村条例等に則って適切に飼養することを指導し確認した上で引き渡し等を行う。
山で捕獲した猫を譲渡する場合は、
- 動物の愛護及び管理に関する法律を守る
- 奄美なら飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例を守る、完全に室内で飼養する
- 島外の譲渡者に対しては動愛法及び各市町村の条例にのっとった適切な飼養を確認し引き渡す
といった条件のもと譲渡するよと書かれていますね。
「動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)を守る」って?
動物愛護管理法をみてみると、様々な取り決めがあるのですがその中でも「家庭動物等の飼養及び管理に関する基準」を守りましょうねということですね。
家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(平成14年環境省告示第37号)を見てみると↓
- 飼い主としての責任
- 最後までしっかり飼おうね
- 飼う動物については勉強して適切に飼養していこうね
- 飼う動物に合ったご飯やお水をあげようね
- 病気やケガの予防など健康管理につとめて、病気になったりケガしたら獣医師さんにみてもらおうね(じゃないと虐待となるかもしれないよ)
- 飼っている動物が公園や道路などの公共の場所だったり他人の土地や建物を破壊したり、糞尿などで汚さないようにしようね
- 飼っている場所も清潔に保とうね
- 家庭内で飼う動物は原則、去勢不妊手術や分別飼育して繁殖を制限しようね(最後まで飼ったり譲渡できるなら繁殖もありだけど、多頭崩壊はもってのほかということだね)
- 動物の糞尿を処理した時はちゃんと手指の洗浄や消毒もしようね
- 脱走しないように努めてね(マイクロチップ装着など所有明示もしよう)
- 猫の所有者は疾病とか感染防止、事故、環境保全の観点から屋内飼養に努めていこうね(外で飼うとなった場合は周辺地域の住人の日常生活に支障を及ぼさないように努力してね)
といったことが書かれています。
(詳しくは家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(平成14年環境省告示第37号)を見てね!)
動物を飼う時の心得的なやつだけど、文字多すぎて読む気が失せるんですよね!わかる!
でも大切なこといっぱい書いてあるから動物を飼う前に一度は目を通してみても損はないと思います。
奄美の飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例って?
奄美では動愛法とは別に、「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」なるものが存在します。
1から10までじっくり見たい方はこちらのリンクから飛んでみると良いのですが、やっぱり文字だらけなのでここは啓発パンフレットを見てみましょう。
要は家の中でちゃんと飼おうね、という決まりですね。
動愛法の奄美版的なやつです。
多頭崩壊にもならないよう、4頭までと決められていますが許可がもらえたら5頭以上の飼養も可能です。
この他にも、みだりな餌やりの禁止、飼い猫を責任もって飼養しよう、捨てるのはいかんよということが盛り込まれています。
猫飼いさんならこちらも見ておいて良いかもしれない!な条例ですね。
引き取るなら室内で飼おう!

https://amami-book.info/heartrock/
奄美大島内においては動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動愛法」)及び5市町村の「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」(以下「条5例」)を遵守するとともに完全に室内で飼養する
とノネコ管理計画には記されているわけですが、しかし動愛法には家の中で飼おうぜ!という文も含まれていますので、
奄美大島外においては動愛法及び各市町村条例等に則って適切に飼養することを指導し確認した上で引き渡し
となれば、奄美大島以外にいった奄美の山で捕獲された猫たちもやはり室内で飼うのがベストです。
奄美大島で引き取る場合は室内で飼ってね、というのをあえて言ってるのは、奄美大島の猫条例は「原則室内飼いが好ましいけれど、どうしても難しい場合は外飼いも仕方がないかな」とされている部分があるからでしょう。
奄美大島でも室内で適正飼養している方は沢山いますけれども、家の構造上猫が外に出ていってしまう、昔ながらの飼い方・考え方から脱せていない、室内で飼うことの重要性などを分かっていない方もやはりいますので、この「奄美大島内においては動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動愛法」)及び5市町村の「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」(以下「条5例」)を遵守するとともに完全に室内で飼養する」の一文が必要だと判断された可能性がありますね。
上でも書いたように、一度山にご飯があると認識した猫はまた山へ入ってしまう可能性がありますから、山で捕獲された猫を外飼いされるのはどうしても避けたいからこその一文だと理解しています。
これは個人的な意見になるのですが、飼うならやはり可愛いところ見たいじゃないですか。
ならもうこれ室内で飼う一択になりけりでしかなくないですか?!?!?!?!何故外で?!?!??!?!?
奄美の猫に限らず、飼うなら家の中っていうのが全国的にもっともっと広まってくれたらなあと思う次第です。
適切に飼養することを指導し確認した上で引き渡し
奄美のノネコを引き取るには譲渡者認定を受けないといけないのですが、この譲渡者認定を受けるために
- 書類提出
- 審査
- 講習会を受講し認定
- 譲渡
といった流れがあります。
この時の講習会で適切に飼養することへの指導があるのですね。
書類提出の時点で誓約書も提出するのですが、この誓約書にすでに「譲渡される動物を終生にわたり適正に室内飼養します」とありますので、講習会は適正飼養に関してのおさらい・確認の面が強いかもしれません。
いずれにせよ、猫も安心して暮らせる環境か確認するということでもあるので、この流れは重要ですね!
まとめ
何故長くなるか、それは語るからですよね。
蛇足になっているんだろうなあと思いつつですが、しかし私のブログやし良いかな?と今回は特に開き直っています。
ですが偏らないように、嘘にならないようには気を付けていますので、そこらへんは大丈夫かなと!
割ともうラストスパート入っているので、最後まで頑張ります。
あと途中、画像足りなくなって過去に出した画像出してます!次回に期待!